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【ココシル活用事例|上天草市インタビュー】物価高騰対策のデジタル商品券が、市民のデジタル・ディバイト解消へ

写真左が山田裕之さん、右が楠元凪さん

ユーシーテクノロジ(株)は、訪日外国人を含む観光客や地域住民を対象に、“まち”に関する多様な情報サービスを提供するデジタルプラットフォーム「ココシル」を展開しています。

観光施設・店舗案内、ニュース・イベント情報の発信、回遊性を高めるためのスタンプラリー、施設・店舗等で特典(クーポン)を利用できる観光パスポートなど、ニーズに合わせた豊富な機能を搭載。カスタマイズにより、「観光アプリ」「街歩きアプリ」「自治体総合アプリ」「博物館展示案内アプリ」などを、低コスト・短期間でオリジナルのアプリを構築できる点が強みであり、現在、全国約90の地域で導入されています。

さて、ココシルには、地域経済の活性化を目的に、クレジットカード決済・コンビニ決済で事前に購入(チャージ)したポイントを利用して商品・サービスをお得に購入できる「ココシル地域ポイント」機能があります。熊本県上天草市様では、この機能を活用し、物価高騰の影響により疲弊した市民生活及び市内事業者の支援、また決済に関するデジタル化、キャッシュレス化等に対応することを目的とし、購入額にプレミアム分を上乗せした「プレミアム付きデジタル商品券事業」を、2023年度から3年にわたり「ココシル上天草」上で運用していただいています。

今回は、上天草市 経済振興部 観光おもてなし課 産業振興係 係長 山田裕之さんと楠元凪さんに、ココシル導入の経緯や事業者・市民の反応についてお話を伺いました。

ココシル上天草アプリトップページ/プレミアム付きデジタル商品券事業実施時の様子

――上天草市様が、プレミアム付きデジタル商品券事業に取り組むことになった経緯についてお聞かせください。お二人が本事業の担当になられたのは2024年度からということで、お分かりの範囲で構いません。

山田さん:
当時、国から自治体のDX化が推進されていたことと、新型コロナウイルス感染症の影響で地域経済が大きな打撃を受け、早期の回復策が求められていたことが背景として挙げられます。この2点をもって、「何かしらのデジタルを使った経済対策をすべきだ」と方向性が定まったことが始まりだと聞いています。

従来の紙の商品券も検討されたようですが、印刷・配送などに時間とコストがかかる点が課題でした。また、紙の場合は仕分けや数量の確認で対面の業務が発生します。当時はソーシャルディスタンスが重視されていた時期で、“密”を極力減らす必要があったこともあり、デジタル商品券という形式が採用されたようです。

楠元さん:
実際、以前は紙の商品券事業も展開していましたが、郵送ではなく、市の職員や商工会の職員の方々が屋外にテントの販売所を設置して、手売りするという形式だったんです。市民の方々も直接取りに来ないといけませんし、真夏の暑さの中でマスクをすることで、熱中症のリスクも大きかったようで……。そういう点も含めて、デジタル化に踏み入るきっかけになったと考えています。

――デジタル商品券を使用するシステムに関してのプロポーザル(企画競争)が行われた結果、弊社のココシルを選定していただきました。選定に至った理由について、差し支えない範囲で教えていただけますか?

楠元さん:
当時から本市では「健康ポイント事業」を運用していました。健康診断の受診や市の体育館利用などでポイントを獲得し、一定のポイントが貯まると500円分の商品券として利用できる、といった仕組みです。こうしたポイント事業と、検討していたデジタル商品券事業を、将来的に一つのアプリへ統合し、万能な「総合アプリ」にするという最終目標を掲げてDX化を推進していく方針がありました。そこで、もともと観光周遊アプリとして開発されていたココシルの機能拡張性の高さが、選定の決め手になったようです。デジタル商品券事業だけであれば、他の電子決済に特化したサービスが選ばれていたかもしれません。

また、上天草市は観光都市ですので、位置情報を活用したココシルのサービスが、本市の観光事業との親和性が高い点も評価されたポイントだったのではないかと考えています

――費用面についてはいかがでしたか?

山田さん:
他の事業者のサービス内容を完全に把握しているわけではないのですが、ココシル自体がさまざまな地域団体の相乗りのアプリであるということもあって、コスト面でも圧倒的に優位性が高かったというふうに聞いています。多分、桁が違うぐらいの……(笑)。

――そうなのですね! 弊社としても他社様のコストが気になるところですが、そこまで優位性があったとは知らなかったので驚いています。
それでは、初年度となる2023年は「上天草デジタルお食事券」として、飲食店に限定した商品券を販売されましたが、どのような実施内容だったか具体的にご説明いただけますか?

「上天草デジタルお食事券」のチラシ。2023年10月1日から2024年2月末まで約5か月にわたって実施されました。

楠元さん:
デジタル化に踏み出す初めての商品券事業ということで、管理が複雑になりすぎないよう、まずは利用対象を約30店舗の飲食店に限定し、お食事券という形で販売しました。お食事券は、1口5,000円で7,000円分利用可能(40%プレミアム)という非常に高いプレミアム率で提供しました。今では考えられない思い切った設定だったのですが、飲食店のみという施策が想像以上に響いてしまったようで……。市民の方からは、「衣料品や食料品など、日常の買い物でも使いたい」という声が多く寄せられ、利用はそれほど広がらなかった印象があります。

山田さん:
そもそも「誰をターゲットにするのか」が曖昧だった点も大きかったと思います。観光客向けなのか、市民向けなのか、どちらも取り込もうとして明確な訴求が行えていなかったんです。観光客が現地でアプリを案内されても、その場で登録して使うのはハードルが高いですし、一方で、日常的に外食する文化がない地域でしたので、市民の利用機会が限られていました。そうした部分でミスマッチがあったと感じています。

「上天草デジタルお食事券」利用イメージ。店舗の二次元コードを読み込むことでスムーズなキャッシュレス決済が行えました。

――そうしたお声もあって、2024年度は上天草市民をターゲットにした「上天草お買い物ポイント」(実施期間:2024年9月2日~2025年2月28日)として、小売店や宿泊施設等でも利用できる形になりましたね。2025年度も「上天草デジタル商品券」(実施期間:2025年6月2日~2025年12月1日)と名称を変え、規模を拡大しながら事業を運用してきたところになります。この3年の事業の中で、どのような成果や反響がありましたか?

山田さん:
2023年度は「デジタルお食事券」、2024年度は「上天草お買い物ポイント」、そして本年度は「上天草デジタル商品券」と、名称は毎年変わっているのですが、市民や事業者の方々にはすっかり「ココシル」として定着しました。「今年はココシルはやるの?」と聞かれることもあり、それほど本事業が浸透したのは大きな成果だと感じています。2023年度の参加店舗は30店舗弱にとどまりましたが、2024年度に一般店舗へ対象を広げたことで約70店舗に増加。さらに本年度は105店舗まで拡大しました。

事業者側の理解が深まったことも大きな変化です。利用者にアプリのインストールからユーザー登録、チャージの方法まで懇切丁寧に説明されている方も多くなってきましたし、特に単価の高い業種では、「ココシルを使うとお得ですよ」と積極的にココシルの利用を勧められているようです。加えて、「デジタル商品券に対応していることを見える形でアピールしたい」という事業者側からの要望があり、2024度からは、運営組織であるデジタルポイント実行委員会が「ココシル上天草加盟店」ののぼりを作成しました。それを各店舗で掲示するようになったことからも、本事業に対する意識の変化を実感しています。

「ココシル上天草加盟店」ののぼり

――2023年の「上天草デジタルお食事券」を実施する際、我々が現地で事業者の方々にココシルの利用方法をレクチャーさせていただきました。当時は「あまりスマホに慣れていない」、「アプリのダウンロードの仕方がわからない」というお声が多かった記憶があります。そうした事業者の方々も、この3年でデジタルに対する抵抗感がなくなった印象はありますか?

山田さん:
そうですね。利用者の方から質問されるシーンもあるでしょうし、「これはしっかり対応しないと機会損失につながるな」という意識は、おそらく2023年時よりも前向きに、事業者側においても広まっているのかなと感じています。

――上天草市におけるデジタルディバイト(情報格差)の解消に関しても寄与できているということで、我々としても大変嬉しく受け止めております。その他にもココシルを利用・運用するメリットを感じることがございましたら、ぜひご意見をいただきたいです。

山田さん:
予算上のメリットももちろんありますが、それ以上に大きいのは、御社のサポート体制です。担当チームの対応の細やかさ、スピード感には非常に助けられています。「このチームに任せたい」と思える安心感が、毎年継続して事業をお願いしたくなる最大の理由だと感じています。また、市民の方々がココシルの使い方に慣れてきていますし、事業者においても、あらためて利用方法を説明する必要がほとんどありません。昨年登録した内容をそのまま使えるため、追加の手間も少なく、スムーズに継続参加できる点も大きなメリットかと思います。

――それでは反対に、本事業やココシルに対して課題と感じられている点があれば教えてください。

山田さん:
まず、事業についてはサポート体制ですね。利用者からの操作方法の問い合わせなど、すぐに電話対応ができたり、24時間体制を整えたりというのが理想なのでしょうが、そのあたりの準備ができなかった点が挙げられます。

ココシルについては、先ほど楠元からもご説明したとおり、将来的に総合型アプリ、いわゆるスーパーアプリとして発展させるという構想を前提に、ココシルを採用した経緯があります。当時は総合型アプリがまだそれほど多く世に出ていませんでしたが、今では多機能をパッケージしたアプリサービスが増えていますよね。そうしたサービスと比べて、ココシルは拡張性がある一方で、「どの機能を」「どの順番で」「どのように実現していくか」というロードマップを明確にご提示いただいてないように記憶しています。「作ろうと思えば作れる」という段階で止まっている印象がありますので、総合型アプリ化を進めるうえで、もっと方向性をご提案いただきたい。また、他社サービスと比べて、開発コストや導入ハードルにどれほど競争優位性があるのか、その点も現時点では見えにくいと感じていますので、その点もご提案いただけると非常にありがたいところです。わがままで恐縮ですが……(笑)。

さらに、総合型アプリを実現するためには、さまざまな部署との調整が不可欠となります。我々だけでは説得・調整が難しい領域も出てきますので、御社により具体的なコンサルティングを担っていただき、アドバイスをいただけると助かります。

――貴重なご意見をいただきありがとうございます。それでは最後に、来年以降も本事業をご継続いただける場合、どのように成長させていきたいと考えていますか?

山田さん:
将来的には、期間限定のイベントで終わらせず、永続的に利用できるサービスとして運用していきたいところです。具体的には、行政や商工会から独立した運営組織を立ち上げ、自ら予算を確保して自走できる形にしていく体制が必要だと思っています。一般的な電子マネーのように、利用者が継続的に所有できるものにできれば、これまでの事業とは比べものにならないほど、このサービスやシステムの価値が高まるのではないかと期待しています。

――ココシル上天草についても構想があればお聞かせください。

山田さん:
繰り返しになってしまいますが、経済対策・観光施策の領域にとどまらず、先ほどお話した「健康ポイント」をはじめ、地域通貨としての位置づけているさまざまなポイントを集約・管理できる形に発展させたいです。ただし、地域通貨のあり方は自治体によってさまざまで、必ずしも成功例ばかりではありません。観光おもてなし課だけでなく、全庁をあげてどの形が最適なのか慎重に検討すべきテーマだと捉えています。

本年度は、御社にもご参加いただきながら、全庁的な活用方法を検討するワーキンググループも立ち上げましたが、8月の大雨災害の影響で活動が一時中断している状態です。しかし、庁内でも市内でも「ポイントを扱うならココシルが良いのでは」という認識が広がりつつありますので、今後、具体的な活用の道筋を描いていければと考えています。

――弊社としましても、大雨の影響によってワーキンググループが止まってしまっているというお話を聞き、お声がけがかえって負担にならないかと考えあぐねている部分がございました。今後は、上天草様の方針に沿い、積極的に総合型アプリを念頭に置いた提案をさせていただきます。ぜひ今後とも、ココシルをよろしくお願いいたします。この度は貴重なお時間をいただきありがとうございました。

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