TRONビルOSとUCTスマートビル制御システムの構成

下半分が建物の中の設備システムです。上半分が建物を制御する機能、ビル管理者が利用する機能、利用者のためのスマートフォンアプリを実現するソフトウェアです。これらのソフトウェアクラウド上で稼働します。

建物とクラウドの間の接続は、インターネット技術の基本であるIP(internet protocol)で接続され、いわゆるweb APIの形でクラウドから設備状態の取得や制御ができるようになっています。APIとはapplication programming interfaceの略称で、アプリケーションプログラムから対象である設備をどう取り扱えるようになっているかの取り決めのことです。web APIとは、インターネットブラウザで情報を見たり、操作をするのと同じhttpという形式をとるAPIのことを指します。web APIでは、温度、ON/OFFなど設備機器が扱う情報をjsonという形式で表現することになっています。

建物の一般的設備

照明・空調などの建物で一般的な設備は、インターネットが出現する以前よりあるため、web APIの形で操作できないものがほとんどです。このため、設備ゲートウェイが電気通信方式をLANの形に変換し、情報の形式をweb APIの形に整えます。

920MHz無線通信によるIoT機器

IoTルータは、IoT向けの小電力無線通信であるIEEE802.15.4規格に基づき、日本の電波割り当てのされた920MHzの周波数帯を使うIoT機器とweb APIとを変換する装置です。
ユーシーテクノロジでは、温度・湿度・気圧・CO2・明るさ・人感センサーと人の位置を把握するためのBluetoothビーコンを発信する機能を持つ環境センサー、電気錠制御装置、ICカードリーダなどのIoT機器を開発し販売しています。これらの親機となるのがIoTルータ(6LoWPANボーダルータ)です。

920MHzのIoT機器は日本でしか使えないという欠点はありますが、Bluetooth、WiFiなど2.4GHzを使うIoT機器に対して大きな利点があります。2.4GHzはとても混雑していて、通信が途切れやすく、直進性が高いため、見通しのよい範囲でないと届きません。920MHzはこのような混雑は少なく、多少の間仕切り壁は回り込み、一般的なオフィス室内でもWiFiの3倍くらいの距離の通信が可能です。

920MHzを利用するIoT機器の開発にご興味のある方へ。920MHzのIoT機器の開発を容易にするため、IoT-Engine開発キットを用意しています。
詳しくは▶ https://www.uctec.com/iot-products-ja/iot-products/iot-engine/

matterデバイス

TRONビルOSからmatter対応の機器も取り扱えるようにすることを目指し、開発を進めています。
matterは、2022年10月4日に発表されたスマートホームの新規格です。Apple、Google、Amazonをはじめとする米国のIT企業多数が参加する無線通信規格標準団体CSA(旧Zigbee Alliance)によるIoT共通規格で、異なるメーカのスマート家電が互換性をもって安全に運用できることを目的としています。

matterに関しては、最初の公式仕様書が発表されたばかりで、製品が登場するのは2023年からといわれています。matterデバイスは、2.4GHzのWiFiおよびthreadを使った無線IoTデバイスが想定されています。それらを統合する機能を持つものはHUBとよばれています。
matterのHUBとビルOSを接続することにより、例えば会議室の一部のスタンド照明がmatter対応で、間接照明は従来の照明設備というような場合、ビルOS経由で両者を統合して操作ができるようになります。

AV機器

教室設備や会議室設備で、プロジェクタやマイクを使う部屋ではAV機器の操作以外にスクリーン、スピーカシステム、ブラインド、照明などとの連動が必要になります。AV機器の制御方式として、Audinate社のAV over IPテクノロジーDante AVという規格があり、ヤマハやSONYなどでも採用している機器が発売されています。ユーシーテクノロジのスマートビル制御システムではDante AVに対応し、AV設備の操作を容易にするとともに、ビルの他の設備との連動を行う統合制御ができるようになっています。

クラウド上のスマートビル制御システム

スマートビル制御システムは、大きくわけてビルOS、コントロールアプリケーション、高度制御アプリケーションという3層構造をしています。ビルOSはコントロールアプリケーションに対してデバイス・設備メーカに依存しない統一的なweb APIを提供します。従って、ある設備の更新でメーカが変わったり、新しい機器が導入された場合でも、コントロールアプリケーションは、大幅な書き換えをせずに対応が可能となっています。

ビルOS

ビルOSは、建物側のメーカやデバイスに依存しているweb APIをメーカやデバイス非依存の統一APIとしてコントロールアプリケーションに提供します。デバイスのプロファイルはOAS(Open API Specification)形式で記述されたものを利用し、これから統一APIを生成します。デバイスプロファイルは将来的にはBIM(Building Information Modeling)中に記載される機器やデバイスのリンクからメーカが提供するようになれば、BIM図面上で必要な機器をインポートし、配置するだけで、自動的にAPIが生成される流れがとれることになります。
ビルOSの機能この他、動的にデバイス・機器を登録する機能、ビル設備からの状態変化などのイベントをアプリケーションに通知するためのイベントブローカなどの機能を持ちます。

コントロールアプリケーション

いわゆる従来の中央監視装置が行っていた機能を実現しています。スケジュール管理・連動制御や、ビルの利用者が設備を操作するためのスマートフォンアプリケーションを実現するサービス、ビル管理者向けのサービス画面を提供するサービスなどが含まれます。
また、特に重要なのは、だれが、どういう状況で、何ができるのかということを管理する権限管理機能です。このほか、環境・設備状態・電力量、操作ログ・位置データなどを蓄積するデータベースを含んでいます。

高度制御アプリケーション

カメラの映像から人認識や人数、込み具合を判定したり、誰がどこにいるかを推定したりするような機能を実現し、これらの情報と、BIMに含まれる建物情報から、FM(ファシリティマネージメント)、PM(プロパティマネージメント)に役立つ情報を引き出すなどの応用が考えられます。

ロボット

現在各所で配送ロボットの実証実験がおこなわれています。今後配送ロボットが外からビルに入場し、目的の場所に荷物を届けるというようなことになるでしょう。このようなケースでは、ロボットを制御しているクラウドと、TRONビルOSベースのスマートビル制御システムがクラウド間連携することにより、建物へのアクセス許可やエレベータに自動で乗るというようなサポートが可能となります。

国土交通省バリアフリー・ナビプロジェクト
経路中にある公共エレベータに配送ボットが乗り、目的地まで荷物を届ける実証実験